ウツは人間本来の感情なのですーー「鬱の力」から

▶キーワードーー「鬱の力」「人間の関係」「五木寛之」「エラン・ヴィタール」


「16歳の春に、最初のひどいウツ状態になった」と、
私が両親に打ち明けた翌朝、
父は五木寛之さんの著作「人間の関係」''''ポプラ社 
を買って来ました。


五木さんのこれまでの人生で3回の「鬱」を体験したことを、
この「人間の関係」では正直・素直に語られています。


そしてつい最近ウチの奥さんが、
五木さんの新著「鬱の力」''''(香山リカさんとの共著 幻冬舎新書)を買って来ました。


ウツではない人にとっては、ウツの人の内面がどんな状態なのかーー
どうも? 想像がつかないようです。

ですから、五木さんのように「ウツを内側から語ること」は、''''
ウツではない方、''''
ウツの人を周辺でケアする方には、''''
とても意味があるのですね〜〜。''''

今回の「香りと心の旅からの便り」では、
私自身の「ウツ体験」も交えながら、
「鬱の力」についてご紹介します。
(「鬱」とか「ウツ」と、ここでは用語をあえて区別しないで、
使っています。ご容赦ください。)

こうして私はキッチンの片隅で、
新書判の「鬱の力」を読み始めました……。
まず本書全体の基盤として、
「治療すべきうつ病と、''''
人間本来の感情である『鬱』は分けなければならない」''''
という五木さんの考えが流れていて、
精神科医として香山さんも、ここに同意しています。


「ウツ」の状態を、「よくないこと」とか、
「恥ずかしいこと」とか、
「直さなくてはならない状態」と考えなくても良いのではーー
ということです。


「いまの世の中で気持ちよく明朗に、
なんの疑いもなく暮らしているような人というのは、
僕はむしろ病気じゃないかと思うんです(笑)。
毎日これだけ胸を痛めるようなニュースがあって、
気分が優れないのは当たり前でしょう。


心がきれいな人、
優しい傷つきやすい繊細な感覚の持ち主ほど、
今はつらい時代です。」p20

かつて20代の私は、
例えば友人が私を見る時の「ちょっとした眼差し」が気にかかって、
それだけで時々「不眠」になったりしてました。


今ならば……
「ウジウジ悩んでいるより、
言葉にして本人に聴けば??」
と思います(爆笑)。
当時の私には「言葉にできない」「言葉にならない」想いや感情が、
蓄積している状態だったんですね。


自分の感受性が、
全体からみて平均レベルなのか、繊細なのかーー
なんてわからないものです。
どうも私の感受性のパターンとしては、
全体としては平均レベルよりもやや敏感、
ただ分野やカテゴリーによって、超敏感だったり、
逆に鈍感だったりバラツキがあるキャラクター
ーーと、今は自覚しています。


自分の「感受性のパターン」を第3者の視点で、冷静にみられると、
ラクになるでしょうね。
そして、敏感な感受性それ自体は問題ではなく、自然なのです。

「エネルギーと生命力がありながら、''''
出口を塞がれていることで中で発酵するものが鬱なんですよ。''''


鬱の奥には「憂」という外へ向けられるホットな感情と、
「愁」という、人間の実存を感じたときに起こる
なんともいえないものという、
二つの感情がある。
(略)
「憂」と「愁」の二つがあるということは、
ようするに人間的だということです。
(略)
「鬱」という状態は、
「憂」や「愁」といった感情の出口がなくなっている状態、
『エラン・ヴィタール(生命の跳躍)』の出口が失われている''''ことが、
本当の原因だと僕は考えているんですね。」p29

そうですね〜。まとめますとーー
自分の内側の「エネルギー」や「生命力」の実在を認めて、''''
それらの「出口」を見いだす・作ること''''ーー
が、「ウツ状態」からの根本的な解決法となるでしょう。''''


▼注:エラン・ヴィタールーー
フランスの哲学者アンリ・ベルクソンが提唱した、
生命の進化を押し進める根源的な力。
アンリ・ベルクソンは、ホリスティック
(身体/意識/魂をひとつとしてみる見方、全体的)な哲学の
起源のひとつ、みたいです。

さらに五木さんの近年の著書……
「蓮如」「他力」「不安の力」
「林住期」「私訳 嘆異抄」「人間の関係」など
総合的にふり返りますと……
軽〜い、カジュアルな語り口ではあるが、
「鬱の思想」を越えて、
人間のネガティブな側面を受容的にとらえ直そうとする
五木さんの思想の、森のような広がりが見えてきます。

「ダメダメな部分、どうしようもない部分、''''
ネガティブな部分もあって、いいんだよ」''''
という五木さんの声が聴こえてくるようです。

「ウツ」あるいは「鬱」について、
人間がどうしようもなく抱えている「ネガティブな部分」について、
深く同時に気楽に(!)とらえてみたい方に、
これらの五木さんの著作をお勧めします。

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